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 だが、M国の崩壊を暗示するかのように、クローン兵部隊編成計画は突如として崩壊、計画は中止に追い込まれたと亡命した元研究員は語った。計画の中止に伴い、島の研究設備は閉鎖され、計画のリーダーは責任を取らされ処刑された。また亡命した元研究員自身も左遷させられ、この計画について口外しないよう監視をつけられた上で、亡命直前まで囚人が働く鉱山で肉体労働をさせされていたという。なお、M国の崩壊を待たずして計画が失敗に終わったであろうことは、軍部によってすでに予測されていた。事件の発覚後、数年が経過したある時を境に、軍事偵察衛星の写真に動きが認められなくなっていたからである。  では、なぜ計画は頓挫したのか?  答えはウイルスであった。クローン兵はAウイルスの感染によって次々と倒れ、対処する間もなく全滅したという。クローン兵はAウイルスに耐性を持っていたが、皮肉なことにそれによってAウイルスの感染がまん延してしまったらしい。そしてクローン兵の間でまん延したウイルスは長期間にわたる感染によって突然変異を繰り返し、ある日突然、極めて致死性の高いウイルスが出現したのだという。感染から死に至るまで、わずか24時間であったというから、原因をつきとめたころには完全に手遅れだったことが容易に想像できる。  不幸中の幸いと言うべきか、クローン兵を全滅させたウイルスは、不思議なことに島の研究員には全く病原性を示さなかったそうである。
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