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自らの予言を的中させたアルフレッド・ノースマン博士は統合参謀本部会議に招かれ、M国のクローン兵部隊編成計画が失敗に終わった原因について解説した。
「例えばここに、マウスではほとんど増殖しない、つまり病気を引き起こさないウイルスがあったとする。」
「このウイルスを実験室でマウスに感染させ、増えてきたウイルスを次のマウスに感染させ、ということを繰り返すと、やがてマウスの中で爆発的に増殖し、次々と死滅させる毒性の高いウイルスが出現する。」
「クローン兵部隊編成計画で発生した事故は、これと同じことだ。」
「だが人間の世界では普通、こんなことは起こらない。それはなぜか?」
「実験室のマウスには多様性がない。その遺伝的背景は均一化されている。つまりクローンのようなものだ。」
「一方、人間の世界には多様性がある。あるウイルスに対して強い人、弱い人、様々な人がいる。」
「Aさんの中で爆発的に増えるウイルスが、Bさんでも同じように増えるとは限らないわけだ。」
「だから例え次々に人を殺すようなウイルスが出現しても、そのウイルスに対して弱い人間が倒れてしまえば、そこで終わる。」
「全ての人類を一様に死に至らしめるウイルスを作ることなど不可能なのだ。」
説明を終えると博士は今回の事件を総括して、こう述べた。
「多様性を失った生物は絶滅の道をたどる運命にある。」
「国家についても同じことが言えるだろう。」
「多様性を許容できない国家は滅びる運命にあるのだ。」
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