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「アンタね、こんな所で麻薬なんてうりさばいて良いと思ってんの?」
私の怒声に、金髪ピアスのその男はあぁあん?と、不機嫌そうな顔をあげた。
麻薬を売りつけられそうになっていた、弱気な男子高校生がその隙に脱兎の如く逃げ出すのを、私は視線の端で捕らえていた。
「てめぇのせいで客に逃げられたじゃねぇかよ」
ぁあん?と。
金髪ピアス、長身のその男がダメージジーンズのポケットに無造作に麻薬を押し込むと、私を睨みつけてくる。
学校指定のブレザーを品よく着こなす私を見て、彼がいきり立つのも無理は無い。
私だって出来ればこんな身元のばれる服装で、麻薬の取り締まりなんてしたくはないのだけれど、そうしなきゃいけないときだってあるし。
今、まさにそのときだったのだから仕方が無い。
「どう落とし前とってくれるんだよ、このガキがっ
ああ? その身体でとりあえず、前金だけでも払ってもらおうか?」
怒りに燃えた目をした、ちょっとヤバめの男の腕が私の胸元に伸びてくる。
ばしりとそれを、ぎりぎりのラインで学生カバンで叩いて落とすと、踵を返して走り出す。
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