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パパが用意してくれたのは、学校からもアクセスの良い、ホテルのようなマンションで、私は家の掃除も料理もしなくても、快適に過ごすことができた。
危ないことはもうしない、と、約束したので、麻薬の密売人を見つけても以前のように追いかけることもしなくなった。
お屋敷を出て、数日が経った頃電話が鳴った。
もうすぐ夏休みが始まる。
「もしもし、都さん。
いい子にしてる?」
変わらない、テノールの甘い声。
「はい、とっても」
「それは良かった」
くすりと笑う大雅の姿が、本当に目の前で見られればいいのに。
「今、厄介な案件が入ってきてね。
急なトラブルには応じてあげられないかもしれないんだ。
だから、しばらくはいい子にしていて、お願いだから」
「はーい。わかりました」
「夏休みに入ったら、少しは寂しくなるかもしれないでしょう?
都さんの部屋はちゃんと空けてあるから。
いつでも、戻ってきて」
ドキンと、胸が高鳴る。
大雅も淋しいのかと聞いてみたい。けれど、久しぶりの電話に緊張してしまったのか、うまく唇が動いてくれなかった。
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