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4.突然の××
死後の世界は、こんなに清潔であったかいのかな。
目を開けたら、白くて眩しくて私は思わず顔を顰める。
「都さん」
優しい声が私にそっと語り掛けた。
死神の声が、大雅の声にそっくりなのはきっと、私がそうであってほしいと願っているからなのだろう。
そっと、指先が私の頬に触れる。
死後の世界もこんなにリアルな感覚があるんだ、と、不思議に思うのと、激しい頭の痛みを感じたのはほとんど同時だった。
「あったまいたい……」
思わず、掠れた声が出る。
「都ちゃん、今点滴に鎮痛剤入れるから、少しだけ待って」
聞こえてきたのは、パパの声。医師免許を持っていたことを頭の片隅で思い出す。
徐々に、視力が戻ってきてそこが病院の一室のような部屋であることを確認した。
「都さん、俺のことわかる?」
不安そうな声が、私の名前を呼ぶ。
手を動かそうとして、ようやく針が刺されていることに気が付いて顔をしかめる。
逆の手には、手厚く包帯が巻かれていた。
ああ、生きてるんだ、私。
心配そうに私をのぞき込む大雅を、いつもよりずっと髪が乱れている寝不足そうな彼を、はっきり視線でとらえた瞬間、言葉よりも先に涙がこぼれた。
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