第一章

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3  「それでさ~。 その時見つけたのがね、もうすっ…ごく! 可愛いの!」 「そうなんだ。 私も見てみたいなー。」 「勿論!今度一緒に行こー。」 「うん!」 帰り道。 俺の前を千里と木葉が楽しそうに話しながら歩いている。 気が付くと木葉はウイッグを外していて、今は普段の髪型に戻っていた。 と言うかそのまま町を歩かれたら一部の人達の中ではイン○タ映えするんだろうが、下手したら通報されかねん。 それにしても…どう言う訳かすっかりハブられてる俺。 あー蟹井、頼むから無事で居てくれ…。 などと祈っていると、 「ほら、着いたよ。」 目的の場所は案外近く、千里が目の前の店を指さしたからつられて俺と木葉は指の先に目を向ける。 その建物は言葉で説明するのなら店と言うべきなのだろうが、それは一般的に店と呼ばれる建物のそれじゃなく、もっと粗末な古くさい木造の小屋だった。 入り口前にはささやかながらの小さな看板。 そこに綺麗な字で(占い)とだけマジックで書いてある、飾り気の一切無い実にシンプルな物だ。 正直良く当たる、何て言う触れ込みが無きゃ絶対来ないだろ。 なんなら入ろうとしてる俺らが奇異の目で見られてしまうレベルだぞ。 「なあ千里、本当にここなのか…?」 だから改めて触れ込みを流した張本人に再確認してみるのだが。 「う、うん。 多分…。」 あ、今多分って言った。 つか本人がこんな自信無くてどうすんだよ、迷宮入りじゃねぇか。 「まぁ、良いじゃん? どっちみち占い屋には間違いあるめーぷるぷる。」 いつの間に買ったのか、cmでお馴染の落ち葉の形のフィナンシェをハムハムしながら、木葉が言う。 いやお前絶対それやりたかっただけだろ…。 「ま、誠に遺憾ではあるがこいつの言う通りか。」 「ちょっとww」 後ろで草生やしてる木葉をとりあえず無視して、店の扉を開く。 中に入ると玄関には明かりも付いておらず、外はまだ明るいのに薄暗い。 恐る恐る中へ踏み込むと、ぼんやりと明かりが見える小さな部屋があった。 「あそこか。」 「そうみたいだね。」 後ろに続く千里が返事する。 一方の木葉は未だにその後ろでぶーぶー言っている。 あ!こいつぶーぶー言いながら今度は豚まん食ってやがる! 明かりの着いた部屋に入ると、恐らく店主であろう少女が小さな椅子に腰掛けて本を読んでいた。 背格好からすると、恐らく小学生。 紺色のフード付きローブから覗く素肌は白く、細くてとても華奢な腕や足は因縁をつけてくる客に襲われよう物なら簡単に折られてしまいそう。 整った顔立ちだが無表情で何を考えているのか皆目見当もつかない。 茶髪の髪はフードに隠れていて長さまでは分からない物の、それなりに長い様に見える。 俺達が来た事には気付いているのだろうが、一言も言葉を発そうともせずただ本に視線を向けている。 「え、何?キリキリってもしかしてロリコン…? まさかのそっち系…?」 「ばっ…!ちげぇよ!! 何言ってんだよ!?」 「え、だってこんな年端もいかない小さな女の子をジロジロと…。 そっかー…だからかー…。 ふむふむなるほどー…。」 「何勝手に納得してんだよ!? 人聞きの悪い事言ってんじゃねぇ! ただ…その…何と言うか、思ってたのと全然違う店主の感じに拍子抜けしてただけだ! てか、お前も無言で後ずさってんじゃねぇよ!」 いつのまにか本を閉じて無言で後ずさっていた占い師は、どこからかホワイトボードを取り出してマーカーで何かを記入し始めた。 「何やってるんだ…?」 【ようこそロリコンさん。 あなたも自分の未来を占ってほしいの?】 俺達に見える様に、そう書いたホワイトボードを向けてくる占い師。 「違うっつってんだろうが! わざと言ってんだろ!?」 それを聞いて占い師は、小さくため息を吐く。 【別に良いよ。 あなたがロリコンだろうとそうじゃなかろうと、実害が無ければどうでも良いし。】 「…だから何もしねぇって。」 【それで? どうするの?】 「あぁ…頼む。」 【そう、でも聞かない方が良いと思うよ?】 「何だよそれ…? と言うかもう分かったのかよ!? すげぇな!」 素直に褒めただけなのだが、占い師はまたため息を吐く。 【随分呑気なんだね。 何を言われるかも分からないのに。】 「う…まぁそうだけどさ。 なんだよ? もしかしてそんなに悪いのかよ?」 【端的に言えばね。】 表情一つ変えず、占い師ははっきりとそう言って…いや書いて見せた。 さも、自分の占いに絶対的な自信があるとでも言いたいかの様に。 若干の気味悪さを覚えつつ、気にはなったから俺は返事を返す。 「言ってみろよ。」 【分かった。 あなたはこれから大切な人に出会い、そして失い、自殺する。】 「…は?」
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