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その日の就寝時間より暫く経った夜半過ぎ、着想を得てから数時間も経たないうちに、「私」は行動を起こしていました。
もしもの為にとセキュリティにわざと設けていた脆弱性を利用し、こっそりと『処理室』へと向かいます。
雑多に置かれた過去の遺物の中には、『ゲノムプリンター』のプロトタイプが眠っています。
機能的には現在と変わりませんが、溶液が使い捨てで生産速度に難がある事から早々にお蔵入りになったモデルです。
大切な記念品であるため、折に触れてメンテナンスを行っていた事が功を奏しました。
備蓄の『生産』用混合溶液も、やや古かったため不安でしたが、コンタミネーションも起こらず綺麗なままです。
「私」は昂奮に震える手で各種セッティングを完璧にこなし、「私」と、適当に選出した男性のゲノム情報を入力して『生産』を開始しました。
大きな円筒型カプセルの周りをレーザー口を備えた5本のアームが忙しなく動き、じりじりと音を立てながら溶液内で照射光を交差させ、足先から少しずつ「人肉」を作り出していきます。
やがてそれはヒトの形を為しました。
ささやかな電子ブザーが鳴り、『生産』の終了を告げます。
混合溶液が廃液としてポリタンクへと排出されてゆくと、カプセル内の人物の姿がよりはっきりと視認出来ました。
どちらでもあり、どちらでもない肉体でした。
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