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予想以上の結果に肌を粟立たせながら、「私」はカプセルを慈しむように撫でました。
が、すぐにある事実に気づき、慌てて護身用に携帯していたピストルの銃口をカプセル内へと向けます。
その個体が、自立していたからです。
『ようやく……ようやくだ。ようやくここへと辿り着いた。
まずは礼を言わせてくれ。ありがとう』
それは中性的な、しかし確かに「私」と同質の声紋で、はっきりと理解可能な言語を放ちます。
この時点で「私」の心は純然たる恐怖一色へと塗り替えられました。
ピストルを握る手に力が籠もります。
「お前は何だ! 何者だ!?」
『そう恐れないでくれ。〈私〉は お前だよ。そして【私】の行き着く先だ』
〈私〉と名乗る存在の言葉に、「私」は少しずつ恐怖以外の感情――苛立ちが湧き始めるのを感じました。
その声音には、憐憫と、それに伴う不遜さとが、はっきりと乗っています。
それはどうやら『エラー個体』の視線から感じ続けていたものとほぼ同質のものであるようでした。
『終わりの〈私〉から、始まりの「私」へ、全ての解を贈ろう。
かつての「私」が〈私〉から得たように』
「全て……だと?」
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