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世界の滅びの訪れは、あまりに唐突なものでした。
何の前触れもなく、何のきっかけもなく、元となる因子すらも見つからない凶悪な疾病が、世界中に蔓延したのです。
その病は、植物動物の区別なく、すべての生物を速やかに乾いた粘土のように固め、ぽろぽろと崩壊させました。
治せず、防げず、発症の法則すら見当たらないその病は、あまりの苛烈さから神の裁きと同一視され、旧い神話において同様の神罰によって滅びた悪徳の街になぞらえて、「SG」と呼ばれて畏怖されました。
世界は恐慌に陥り、互いを傷つけ合わせ、しかしそれすらも結局はSGによる疲弊によって沈静化され、皮肉なことに人類は史上最も平和な時代を手に入れたのです。
しかしそれは、今際の際に垣間見る、ひとときの穏やかさに過ぎませんでした。
とりわけ問題となったのが食料です。
どれほど備蓄しても、いつの間にか崩れている。生産中に崩れる。生産者すら崩れる。
どうしようもありませんでした。
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