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――ポーン
遙か遠くに過ぎ去った激動の時代に思いを馳せながら、ひたすらに『生産』の様子を見守り続けて2時間が経った頃。
控えめなアラート音に続いて、モニターの左側に備え付けられたラインの状態を示すたくさんのランプの内のひとつが、一瞬だけ緑から赤に変わりました。
出力エラーです。
変化に飢えていた「私」の心が浮き立ちます。
エラーを吐いたのは54番目のラインでした。
作業員達は一時的に持ち場を離れ、それぞれが異常時に割り当てられた行動を取りながら、54番目のラインへと集います。
小さめのストレッチャーが速やかにライン横へと配置され、エラー告知の元となった【私】を乗せて移動してゆき、『工場』の奥に位置する両開きの扉をくぐって見えなくなりました。
『エラー個体発生。〈処理〉願います』
ラインリーダーからの、極めて簡素な業務連絡がスピーカーを揺らしました。
「私」はその終わりも待たずに立ち上がって中央管制室の重々しい扉を開き、廊下を辿って徒歩2分ほどの場所に位置する『処理室』へと向かいます。
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