「私」の願い

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「君たちは本当に通り一遍の反応だな。一体「私」に何を伝えたい?」  問えども答えはありません。  そもそも【私】のシナプスはまっさらな状態なので、言語どころか知能すらまともに有していないはず。  それでも問うてしまうのは、彼女達の行動には感情が――それも決まって薄暗い澱みにも似たものが――宿っているように見えるからです。  それを「私」は便宜上『魂』と呼び、それに対して生じた数々の疑問の答えを日々探っているのです。  ですがやはり、暫く待ってみても状況は全く変わりません。  仕方なく、「私」は『処理』を開始します。  部屋の片隅にある操作パネルへと歩を進め起動スイッチを押し込むと、【私】の頭上から様々な解体器具を取り付けたマニピュレーターがぞろりと姿を表しました。 「私」は何本もの腕と幾つもの解体器具を巧みに操り、【私】の中身を丸裸にしていきます。  どこかに『魂』の宿る特殊な器官が眠ってはいないかと、足を、腕を、腹を、胸を、首を、頭を、じっくりと丁寧に割り開いてゆきますが、やはりどこにもそのようなものはなく、出るのは緑色の汁ばかりです。
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