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それはまさしくドッグファイトに他ならなかった。もちろんクルマにはヨーヨーやバレルロールと言った三次元的な機動はできない。だが、相手のオーバーシュート(自分の前に相手を飛び出させること)を誘い、6時方向を取り合う戦いは、まさに戦闘機同士のそれと全く同じだった。俺はいっぺんに魅せられた。これはぜひやってみたい。
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というわけで、俺は久里原が用意したクルマに乗り、プライヴェーターとしてLVSに参戦することになった。
しかし……
「なあ、ほんとにこれで戦うのか?」
久里原の店のサービスピットの前で、俺は呆れ顔でヤツに言う。しかし、ヤツは全く意に介した様子もなく、さも当然、といった顔でうなずく。
「ああ。LVSはとにかく小さくて軽いクルマが有利なんだ」
……。
今、俺たちの前にあるのは、シルバーボディのやたら小さなオープンカーだった。
スズキ・カプチーノ。
もうとっくの昔に製造中止になっている、軽のFRスポーツカー。
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