ドッグファイターRYO

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「ほんとはF6Aエンジンの初期型の方がトルクが出てんだが」久里原が言う。「さすがに程度のいい個体がなくてな。これはK6Aエンジンの最終モデルだ。一応オーバーホールしてタービンはハイレスポンスタイプに交換してある。マフラーとエアクリもスポーツタイプにしたし、ECU(エンジンコントロールユニット)もセッティングし直した。これで80馬力は余裕で出るぞ。ミッションもクロスレシオに組み直したし、リアデフはノンスリップ、足回りはジムカーナ仕様に締め上げた。ブレーキも前後ともアフターマーケット物に交換。ボンネットはカーボンファイバーだ。本体より改造費の方がよっぽど高かったよ」 ……うーむ。 とりあえず、トランクの上にでかでかと貼ってあるアニメキャラの超巨大ステッカーは、剥がさせてもらうからな…… --- 何はともあれ、まずは練習だ。俺はジムカーナの草レースに数多く参加することで、クルマを操る技術を磨いた。 実際、LVSドライバーはほとんどがジムカーナ出身だ。狭い範囲でクルクルとコマネズミのように動き回ることが要求されるLVSとジムカーナの共通点は多い。ただ、ジムカーナには決まったコースという物があるが、LVSにはない。だからドライバーには状況に臨機応変に対応する能力が要求される。 この能力に長けているのが、ラリードライバーだ。ラリーにも一応コースはあるが、何度もそれを走れるわけではなく、また自然の中で刻一刻と状況が変わるため、ドライバーはそれに応じて常に最適な走りをしなくてはならない。俺はもともとラリー屋だったので、そういう能力もそれなりにある、と自負している。     
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