ドッグファイターRYO

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レーザーガンの発射トリガーは、革巻きステアリングの内側、ステッチの部分に沿って並んでおり、左右のどの指でも、どの角度にステアリングを切っていても引くことができるようになっている。よく素人はステア中に間違ってトリガーを引いてしまうのではないか、と考えるようだが、この位置は逆手ステアでも切らない限り触らない部分であり、モータースポーツの心得が少しでもある人間なら、競技中に逆手ステアを切ることはまずありえない。レーザーガンの発射可能秒数にはトータルで30秒という制限があるため、ミスによる無駄撃ちは極力避けなければならなかった。 競技開始前、自分と相手は競技場の二つの円周部分の頂点にそれぞれ位置して向き合うことになる。レッドシグナルが消えると同時に戦闘開始(ファイツ・オン)だ。レーザーガンの射程距離は10メートル。それ以上の距離ではセンサーは感知しない。データリンクにより、互いに互いのセンサーにどれだけビームがヒットしているかを、コンソールのHUD(ヘッドアップディスプレイ)の中で見ることができる。そのダメージポイントが累計3秒……即ち100%になったら負けである。競技時間中に決着が付かなかった場合はダメージが多い方が負けとなる。ダメージも全く同じならレフェリーの判定による。 競技時間は3分。短いようだが、戦闘機同士のドッグファイトを経験している身とすれば、これでも長い方だ。空中戦はいつも始まったと思ったらあっという間に終わってしまう。そして、地上のドッグファイトも似たようなものだった。それに、LVSの競技中、ドライバーは常に左右にステアリングをせわしなく切り続ける。ロック・トゥ・ロックまで切ることもしばしばだ。3分も戦えばへとへとになってしまう。     
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