栖原君、それアラザンじゃないよ

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「これ、全部藤田さんが作ったストラップなの?! 小さな食品サンプルみたいだ」 「うん! 最近は、こういうのを作れるキットがあるんだ。好きなんだけど……部だと同行の士が居ないの」 藤田さんは製作部という、とにかく何でもいいので作って展示をする部の一員だ。 作る物は個人によって違うけれど、部の中でも大まかなチーム分けがあるらしい。小説チーム、ゲームチーム、料理チームなど、その種類は多岐に渡るようだ。 「私の入ってるハンドメイドチームなんだけど、所属者が私しかいないんだ。レジンアクセやってた先輩は居るみたいなんだけど、卒業してる人で……」 「今年のメンバーには、藤田さんと同じ物を作る人が居ない、ってことなんだな」 「そうなの。あとは、面白いとは言ってもらえるんだけど、身に着けるまでしてくれる子は居なくてさ。だから、とりあえずクラスの子からストラップ配っていって、趣味友を探そうかな、って思ったんだ!」 俺は、こんなに楽しそうに、長く喋る藤田さんを見るのは初めてだった。隣の席なのに情けない話だけども。 何か力になってあげたいな、と思うけれど、俺は手先が不器用だから、ストラップを一緒に作ってあげることはできそうにない。 何か他のことをしてあげられないだろうか、と思案していると、藤田さんが期待と寂しさを浮かべた瞳で、俺を見つめていた。
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