栖原君、それアラザンじゃないよ

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「男の子に配ったのは、栖原君が初めてだけどね。ちょっと、勇気出したんだよ。……できれば、付けてくれると嬉しいかな、なんて」 その目を見て、言葉を聞いて。俺は決心した。 俺が最初に、この子のストラップを身に付けよう、と。 藤田さんは、内容の多寡はどうあれ、他の子にも同じ話をしているはずだ。けれど、手応えを全く感じていないのだろう。 俺の目は節穴かもしれない。けれど、食べ物と見間違えるくらい、このストラップが精巧で魅力的だったということにもならないか? 「分かった。付けるよ」 「栖原君、本当に? 嬉しいけれど、無理はしないでほしいな」 「無理してないさ。だって俺、このストラップ……すごい魅力的だと思うし。だから食べたいって思ったのかもしれないし」 俺は紺色の通学鞄のファスナーに、茶色いチョコのストラップを付けた。どちらも色味が暗く、チョコはほとんど目立っていない。 「うーん。もうちょっと色が薄い物に付けた方が良いな」 「じゃあ、これもあげる」 「おお、ありがとう」 藤田さんは嬉しそうに、目玉焼きのストラップを俺にくれた。これなら目立ちそうだし、奇抜でもない。 ……いいや。たくさんのストラップを見て、俺は感覚が麻痺してしまったようだ。男子高校生のバッグに目玉焼きなんて、奇抜だろ。けれど、俺は宣言した手前、それをいそいそと取り付けるほかなかった。
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