栖原君、手に持っている黒いものは何かな?

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そして、放課後。製作部の部室を借りて、俺と藤田さんはエビフライのストラップを作っている。 結論から言わせてもらうと、藤田さんは教えることも上手だった。俺の手の上には、きちんとしたエビフライが乗っかっているのだから。 「え、エビフライだ。藤田さん、すごい」 「何言ってるの。栖原君が作ったんだよ?」 「俄かには信じられないよ」 あとはこれを固めるだけだ。このエビフライも救われたマカロンも、藤田さん専用のロッカーの中に入れて保管してもらえることになった。有難い話だ。 「ありがとう、藤田さん」 「良いんだよ、本当に。栖原君、興味がないのに取り掛かろうとしてくれるから、優しいなって思うよ」 「……それは違うんだけどな。俺、藤田さんに同情してるわけじゃない」 藤田さんの、後ろ向きで卑屈な態度は見たくないと思った。確かに、最初は力になりたいと思っていたけれど。 「俺、樹脂粘土捏ねるの結構好きみたいなんだよ。頑張れば何か作れそうだって思えるっていうか」 「うん、分かるよ。手軽だし、思った通りの作品にしやすいと思う」 「俺にはそれすら出来なかったけどね。元々工作とか、家庭科の授業とかが苦手なんだ」 俺は作っている最中の、その行為自体は好きだ。ただ、その行為の結果が完成のイメージと結びつかないから、完成品をからかわれたり貶されたりすることが多くて、それが苦手だっただけなのだ。 今回、実際にものを作ってみたからこそ、俺が製作の全てを嫌っているわけじゃないことが分かった。これは大きな一歩だと思う。 「藤田さんには感謝してる。苦手なことを克服出来そうな気がしてさ。きっかけをくれたんだよ」 「やだなあ。私、そんなすごいことしてないよ」 困ったように笑う藤田さんに、どうやったら元気を与えられるだろうか。何か返してあげたいものだ、と俺は思った。
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