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前髪パッツンでおかっぱ頭が特徴的な美幼女。
黙って本でも読んでいたら、それだけで絵になりそうな容姿をした幼女なのだが、今この状況下でそんなふうに思えるほど俺も馬鹿では無い。
むしろ先程から頭やら腕やらに幼女の投げつけてくる書物があたって滅茶苦茶痛い……ということもなく、何か程々に痛い。
ぶつかっては足元に落ちてゆく書物の大きさは、どれも参考書や辞書と同じ大きさかつ重さを持つ物ばかり。
これだけ大きな書物が当たったらそれだけで泣いてしまいそうなものだが、別にそういう訳でも無いため、何とも言えない感情が先程から渦巻いていた。
……とは言え。流石にこの状況の中黙っているのは違うだろう。
俺を異世界に召喚したのはこの幼女なのだ。故にこの幼女は、俺の世話をする義務がある。
だと言うのに、俺を召喚するだけ召喚しておいて、少しばかり下手な詩を聞かれたからといってこの仕打ちはあんまりなのでは?
いくら痛覚が鈍くなっているからといって、こんだけぶつけられて無事で済むはずもない。
俺は幼女が投げつけてきた本を鷲掴み、そのまま止めるように声をあげた。
「……ちょっ、ちょっと待てって! つーかおかしいだろ! 俺をこの世界に呼び出したのはアンタだろうが! なのに何でこんな仕打ちを受けにゃならんのだ! 本来ならアンタは俺に尽くす側だろ!? なんかあるんじゃねぇのか、『どうかこの世界を救ってください!』とか『あなたには私の婿になって欲しいのです!』とか何とか! そういうイベントがさっきから全然起きないんですけど……って痛ぇ!」
「なにをッ、気持ちの悪いことを言っておるのじゃこの愚か者が!! 誰が誰の婿じゃと!?
誰が誰に尽くすじゃと!? 初対面の人間に対して、あまりにも愚か過ぎるわこの戯けが!!」
「初対面の人間に対してハードカバー並の本バンバン投げつけてくるヤツに言われたくないわぁ!!」
……これは外れだ。完全に外れだ。
自分の失態なのにそれを召喚した人間に八つ当たりするかフツー!?
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