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強く頷くと、マイは手にずっと握り締めていた杖をようやく敵の方へと向ける。
たった『それだけの動作で』空気が変わるのがわかる。
……マユリカから聞いていたし、散々だったスライム退治の時も感じてはいたけど。
「……なんつー魔力量だよ、これは」
周囲にある全ての要素が、マイに味方してくれているのがわかる。
草や木々が、踏み付けてきた地面が、風が、光が、その全てが。
マイの手に持つ杖の真ん中に埋められた、真っ白なオーブが色とりどりの輝きを放ち出す。
「……【聞け。我が声、我が叫び、我が魂の鼓動を。この地に生きる全ての者共よ、今こそその心の奥底に宿る魂の律動を奏たまえ】……」
地響きのような音が聞こえる。……地中深くに眠る、今ではもうすっかりと屍になってしまった生物の魂さえも反応させているのか?
ーーつーかこれ、上位レベルなんてモンを軽く凌駕してないか? っていうかこれってもしや、「魔法使い」の使う魔法では無くて、もしかして「魔導師」レベルの方々が操る魔法なんじゃ……。
そこまで想像してすぐに、マイが解き放とうとしている魔法が『異常である』ことに気付き、俺は咄嗟に防御壁を発動し、何とか衝撃に備えようとしたがーー。
「ーーさぁ、今こそ我が力に絶望するが良い! 醜きゴブリンどもめ! くらえ! 【魂地零爆】!!」
マイが魔法名を言った直後、俺たちの視界に辺り一面の「白」が埋めつくし、音も何も聞こえない世界へと飛ばされてしまった。
ーーマイ。スライム退治の時みたいな魔法で良かったんだよ?
なんて呟きもかき消され、俺たちパーティメンバーは一時的に戦闘不能へと陥り、目を覚ました時にはゴブリンどもと、そこにあったはずの『地形』は大きく形を変えていた。
……というか。エルフの村へと続く道の半分が吹き飛んでしまった。
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