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「いつ!? いつその魔王は死んだんだ!?」
「なんでそんなことを……まぁ、そうじゃな。確かあの時はまだ勇者がおった頃じゃったからな。かれこれ50年も前の話になるかのぉ」
「勇者!? つーか50年も前!? おいおい、嘘だろ……?」
ガックリと項垂れる俺に対し、マユリカは益々驚きと困惑の表情を浮かべ、マイに至っては何故か関心したような表情で此方をマジマジと見つめている。
違うぞこけし幼女。多分お前の中では「魔王を打ち倒したくて仕方の無いヤツ」だとか、
「強大な悪を打ち倒すのは、俺だったのに……」
と打ちひしがれる若者のように見えてるのかもしれないが、俺はそんな人間では無いしそんな話でも無いのだ。
──異世界もの最大のイベントが、50年も前に終了している件について。
いや有り得ないだろ。というか有り得ちゃダメだろ。
ここはフツー俺みたいな転生者or召喚者が絶大なチート魔法を得たりして、迫り来る魔物共を薙ぎ払い、最後には魔王を倒して可愛い美少女たちと戯れながらENDを迎える──のが鉄板だろ?
それなのになんでもう魔王倒されてんの?
なんでもう『勇者』なんてもんが現れてるの?
俺の立場完全に無くなってるんだけど。俺はなんのためにこの世界に召喚されたの?
「……ちなみになんだけど。その魔王が倒されたあとで、なんか強大な魔物とかって現れたりしてないの? こう、何というか、ドラゴンだとか……」
「なッ……! きさま、竜を魔物扱いするつもりか!? ふざなるなこの戯けが! 竜は我らにとって神聖な存在で……!」
「まぁ落ち着けマイよ。……ふむ。お主の質問の意図があまりわからぬが、マイの言うとる通り此方の世界ではドラゴン──竜種は神聖な存在なんじゃよ。故に冒険者ギルドではドラゴン討伐なんてものは存在せんし、そもそも依頼そのものが来んのじゃ。それにドラゴン自体、あまり人間のおる場所には姿を現さん存在でな。かつての勇者もワシも、ドラゴンなんてものはあまり見たことが無いくらいじゃ」
「……マジかよ」
「マジの意味はわからんが、マジじゃ」
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