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「先ほど爺じの言った通り、今我らのおる東大陸には、多くの魔物共がおる。理由は二つ。一つは北東付近にある旧魔王城が未だに君臨し、そこを中心として魔物共が多くなっておるからじゃ。魔王がいくら死んだからといえど、あの場所には魔王の強い魔力と怨念が漂っているからと言われておる。真相は不明じゃ。しかしあの場所を中心に、強い魔物共が産まれておるのも確かじゃ」
「……もう一つは?」
俺は唾をごくりと飲み込みながらそう聞くと、マイはニヤリと口角を上げ、生意気そうに足を組んで答える。
「……『新たな魔王』が現れたからじゃ」
……新たな、魔王……。
その言葉の響きに、俺の心臓は強く脈を打った。
どくどくと早まっていく心臓の鼓動に気がついたのか、マイは俺の目をじっと見つめては、つり上がった口角を下げることなく言葉を続ける。
「ふふ、どうやら新たな魔王が気になるようじゃな。しかし残念ながら、我の知っとる魔王の情報はこれっぽっちもない。かつて勇者と同じパーティを組んでいたマユリカ爺じですらも、新たな魔王の情報は掴めておらんほどに情報が回らん有様でな」
「マイ、やめなさい。……それに昔の話はしないでくれと言ったじゃろう。この話はあまり部外者に知られる訳にはいかんのじゃ」
「爺じは黙ってて欲しいのじゃ。いま我はこの戯けと話してる。それに、もうこの戯けは部外者では無い。我が召喚した戯け者じゃ。部外の者ではない」
「大変ありがたいんですが、その戯け呼びは流石にやめてくれませんか……?」
そーっと手を上げてやめてくれるようにお願いしてみたが、「嫌じゃ」の一言でお断りされた。
まぁ、よくよく考えてみたら幼女に「この戯け!」とか言われるのってこうした異世界くらいしか無いし、これって結構レアな体験なんじゃ……?
それにマイだって、まだ幼すぎる感じがするけどかなりの美少女だし、成長すればこれはこれでいけそう──
とか何とか考えている俺の思考が読めるのか、まるで汚物でも見つめるような瞳で「やっぱやめた」と言われた。
よし。これで名前呼び確定だな。
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