オタク

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「なぁ、姉ちゃん。」 姉はテレビをつけながらケータイでゲームしていた。 「なによ。小遣いなんてやらないからね。」 「は?くれなんていってないから。」 「なに?『姉ちゃん』なんて言うからなんか欲しいのかと思った。」 「いや、なんかクラスの男子がイジメられてるっぽくてさ、なんか僕のせいっぽいんだ。」 「は!?あんたイジメしてんの!?」 ケータイを見ていた顔がこちらに向いた。 鬼みたいな顔をしていた。 「違うわ。聞けよ、話をよ。」 「あん!?」 今まで自分がクラスで浮いていたことや、それに関わった真田雄大の話、見たこと、あったことを話しした。 「なんでイジメをしたいんだろう。」 姉は少しも考えずに答えた。 「狭いクラスっていう社会のヒエラルキーの頂点にいたいんだよ。」 (※ヒエラルキー=階層制や階級制のこと。ピラミッド型の段階的組織構造のこと。) 「くだらな」 「くだらないけど、その中しか社会を知らないあんた達にとってはそれしかないわけ。」 「…」 「あんたは今、その中では下級なのよ。いや、そのイジメられてる子が一番下か。 いずれにしても、下なわけ。アンタってイジメられてても『僕は知りましぇん、関係ありましぇん。』とか言っていじめっ子から逃げてただろうから、いじめっ子はつまんなかったんだろうね。だから、標的を変えたのよ。」 「逃げてないし」 「そう?真田くんだっけ? 彼はアンタの隣の席に来てから扱いが変わっちゃったんでしょ? 本当は嬉しかったんじやないの? 真田くんが隣に来て、挨拶してくれて、教科書見せっこして、庇ってくれて。」 「…」 「それなのに、アンタは真田くんを見殺しにするんだね。偉くなったもんだね。」 「…っじゃあ、どうすりゃ」 「決まってんじゃない!アンタがヒエラルキーの頂点に立てばいいのよ。」 「僕が?」 「真田くんのために、自分を変えなさい!いや、変わるのよ!いや!変わらざるおえないのよ!!!」 「はあ?」
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