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放課後
「雄大、図書室よっていい?」
「いいよ。現国の?」
「そう。あの続きが読みたくてさ。つき合わせて悪いね。」
「ううん!俺も探す。」
明人はよく教科書に載っている一文が気になって、その作品を図書室に借りに行くのだ。
「あ、ここら辺じゃない?」
図書室独特のにおい。
図書委員が本棚の向こう側にいるから二人でヒソヒソ声で会話した。
「「あった」」
ベタに二人の手がひとつの作品を捉えて、手が重なった。
「あ、ごめんごめん!俺の探し物じゃないのにな!なんか嬉しくて」
俺はすごい速さで手を引いてしまった。
「ん、ありがと」
探し物が見つかったのに、曇った表情の明人。
明人の様子はやはり少し変だった。
「?、明人、元気ない?」
「え?そんなこと」
俺より背の高い明人の額に手を当ててみた。
「熱はなさそうだけど。」
明人が急に真面目な表情をした。
「雄大。キスさせて?」
「え!?」
俺はうろたえた。
だってこんな学校で、そうでなくてもいじめがやっと収まったばかりなのにそんなキスしているところを誰かに見られようものなら・・・
「だから、まだ、俺はさ、スーパーじゃないからっ・・・」
「じゃあ、雄大はいつスーパーになるの?」
帰ってきた言葉に返す言葉がみつからなかった。
「雄大、何も変わってないよ。
僕は、そのままの雄大が好きだから、変わることはないと思うけど。」
勝手に顔があつくなる。
明人はちゃんと俺を見ている。
それなのに俺は、はじめから逃げている。
明人の気持ちが真っ直ぐで、熱を持っていて俺の心臓をぎゅっと握り締めているみたいに苦しくなる。
「・・・それとも、そんなに、僕が嫌?」
はっとして明人の顔を見上げる。
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