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「…うん、たぶん、僕は馬鹿なんだと思う。」
「…え!」
顔を上げると歩道橋に寄りかかって明人が立っていた。
顔面がかあっと熱くなるのを感じた。
「…ごめん。こんなところで待ってて。キモいよな。」
「ぁ…、いや、そんな」
「どうしても話したいことあって、今、きちんと言わなきゃって思ったんだ。」
明人の真っ直ぐな目で見つめられて胸が跳ね上がった。
「…僕、スパダリになるとか言っておきながら、何一つスパダリらしいことしてなかったよな。ごめんね。
今だって、こんなのストーカーも同然だしさ。
僕…自分のことばっかりになってしまって、雄大の気持ち無視してた。ごめん!」
こんなに綺麗に頭を下げる人初めて見た、と変に感心してしまった。
頭を下げたまま、言葉を続けた。
「…でも、でも、ごめん!ごめんなんだけど!
それでも僕は雄大が好きだし、僕の名前を呼んでほしいし、隣にいて欲しいし、キスしたいし、触りたいんだ!
誰かと喋ってたらムカつくし、雄大のことなんでも知っていたいって思ってしまうんだ。
…ホント、自分でもどうかしてるってくらい雄大のこと考えちゃうんだよ…。」
犬の散歩してるおばちゃんが俺たちの会話を聞いて三度見くらいして行った。
「…人の目なんか気になんないくらい雄大のこと好きんなっちゃって、雄大の気持ちまで見えなくなってたんだ。」
あんなに、他人に興味がなかった明人が声を震わせてる。
「ごめん、雄大が…気がすむまで、殴ってもいいし、なんか、えっと、なんでもするから…僕のこと嫌わないでください。」
更に深々頭を下げる明人。
「…泣いてる?」
「…な、泣いてない、」
どう見ても泣いてるのに、またこんなところでスパダリを思い出したのか強がって返事する明人。
俺は大きく深呼吸した。
「顔上げて。」
「っ!」
明人の頭を起こさせて赤い目の明人と向き合った。
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