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ある日の昼休み。
「おい!雄大!飲み物買ってきてくれよ!」
「ぇ…」
「みんな!雄大が飲み物奢ってくれるってよ!」
「ちょっと、まてよ…」
「コーヒー牛乳の人~1、2、3…」
真田雄大は言葉を飲み込んで立ち尽くしてしまった。
「山本は?何がいい?」
いじめっ子はいつも絶対に話しかけない僕にまで飲み物を聞いてきた。
そんなに真田雄大を貶めたいのか。
「…いらない。」
どっか誰かの歌で、
‘誰か一人の犠牲でみんなが救えるとしても、僕がその一人になる勇気はない。’
という曲があったな…。
その曲の通り、僕は真田雄大を救う勇気はない。
このクラスの人間が全員、あのいじめっ子に目をつけられたくないから同じことを思っているだろう。
真田雄大が飲み物の注文を書かれた紙を投げるように渡され、うなだれるようにしてクラスを出て行った。
というか、おかしくないか?
そもそも真面目に勉強したくて前の席に来たのに、何故くだらない『輪』がそれを邪魔するんだ。
彼は何か悪いことをしたのか?
嫌われ者の僕に普通に話しかけたから、こんなことになってるのか?
くだらなすぎて僕には理由なんて、毛頭分からなかった。
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