一章

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一章

 朝日が昇った。昨夜雨が降ったため地面はぬかるんでおり、葉の上に乗った露はキラリと光を反射させた。  そんな、いつもよりも眩しい朝。広大な森の中にぽっかりと空いた更地にはテントがいくつも並んでおり、朝早くから煙が立ち上っていた。しかしその煙は更地から一歩でも出てしまうと途端に見えなくなってしまう。煙だけじゃない。更地も、いくつもあるテントも、そこにいる人々もまるで幻影だったかのように消えてしまう。  魔法だ。この更地全体を見えなくするための強力な魔法が、ここにはかけられていたのだ。  なにせここは、魔法使いが差別される世界を変えようとしている革命軍の本拠地なのだから。  エルカはゆっくりと目を覚ました。この三年の間に見慣れた布の天井が見え、ああ、と心の中で呟く。今日も一日が始まった。ロットとニノを失った日が、また始まる。     
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