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「はいこれ」
「え?」
今日はバレンタイン。箱を差し出すは俺の気になってたあの子。これは期待しちゃうだろ。しかも重いし、教室には俺と女しかいないし。
「早く」
固まってた俺に女は早くと言ってきた。喜びでにやけそうになる。
俺は恐る恐る箱を受け取り女の目の前で開けた。
「…何これ?」
「課題」
箱を開けた俺の目に飛び込んだのはこれまた中もご丁寧にしゃわしゃわの緩和剤?みたいの上に置かれた分厚い冊子。でかでかと課題ver.バレンタインと書かれている。
「え、なんで?」
「宿題も提出しないし、テストも酷い点数だから、これやんないと卒業厳しいって」
女は俺の前の席に座った。
「…期待したー。チョコだと思うじゃん普通。バレンタインだよ、今日」
「でも、バレンタイン用の課題だし」
「違ぇよー黒くてさー甘くてさー口の中で溶けるようなチョコが欲しいんだよー」
「甘さ以外ならなんとかなるじゃん」
「はぁ?」
「問題は解けるし、解いたら黒くなるし」
「つまんねぇよー。つーか、俺は一番甘さが欲しいし!」
「じゃあ、甘いけど口の中で溶けない奇抜な色したチョコでもいいの?」
「だーそういうことじゃねぇーんだよー」
不思議そうに首を傾げる女。…可愛い。
きっと女は本気で質問してきたのだろう。いっそ女から甘味が貰えるならそれでもいいのか、と悩む俺も俺だろう。
「早くやりなよ、見ててあげるから」
課題を開いて俺の方にぐいぐいと押し付けてくる。
仕方なく俺もシャーペンを持った。
しかし女の言うようにチョコみたいに問題が解けるわけもなく、教室は無音だった。
「…なぁ、あのラッピングお前がやったの?」
「うーん、先生がどうせなら期待させてやろうぜって全部用意してた」
「せめてお前であれよー…」
「私からチョコ欲しいの?」
「うん」
「そっか…」
なんだその反応。ちょっと考えるそぶり。これは、あるのか?俺にもついに春が来るのか!
「まあ、ないんだけどね」
「ねぇんかい!」
「早く解きなよ」
「わかんねぇんだから仕方ないだろ」
しばらく沈黙が続いた。俺はチラリと女を見た。もう俺に興味を無くしたのかスマホをいじっている。
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