「チョコかと思ったんだけど」

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「ねぇねぇ」 「ん?」 「海外のバレンタインは男の人が好きな女の人にプレゼント送るんだって」 そう言って俺に手を差し出してきた。 俺は辺りを見回し課題を女の手に乗せた。 「これがプレゼントってどうなの…?」 「引くなよ!一応お前が俺にくれたものだろ!」 「普通はぬいぐるみとか渡すんだって」 「お前なぁ、それが今俺の周りに隠されてると思うか?」 「鞄の中なら入るかなって」 「こんなでも一応勉強道具持ってきてるわ」 女は俺の鞄の中を開けて確認し、がっかりした顔を見せてきた。 「本当だ。真面目に授業受けないなら重いだけじゃん。筋トレ?」 「聞こえませーん。てか、ここは日本だから。はい、俺にチョコ、ちょうだい」 「早く課題やりなよ」 「邪魔してきたのお前じゃん!」 どうやら本当に俺はチョコをもらえそうにないらしい。 全然問題は解けない。このショックがあろうとなかろうと解けないのだろうけど。 「お前、帰んなくていいの?俺の課題絶対終わんないぞ」 「…いいから早くやんなよ」 女はちょっと苛立ちながら俺に課題をぐいぐいと押し付けてくる。 やるけどさ。 俺はいつまでたっても解けない問題を眺めながらシャーペンをくるくると回していた。 「なんだお前ら、まだいたのか?早く帰れよ」 「課題が終わりませーん」 「家帰ってやれよ。あんまり遅くまで学校に残られると先生が困るんだよ」 「…帰ろ」 鞄を持ち帰り支度ばっちりの女に腕をひかれた。 「お、おう」 「じゃあなー課題早めに持って来いよー」 俺たちは校門を出て家へと歩いていた。 「はー、結局今年もチョコはゼロかー」 「お母さんからは?」 「3倍返ししなきゃいけないから、いらねぇって断ってる」 「そっか」 女の顔は笑っていた。 「お前、俺がチョコ1つも貰えてないからって笑ってんだろ!」 「違うってー」 「嘘つけ!笑ってんじゃねぇか!」 「違うってー」
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