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しばらく歩いていると女の家についた。
「じゃあな、また来週ー」
背を向けた俺の腕をまた女はまた引っ張った。
「ねぇ、チョコじゃなきゃダメ?」
「え?」
「黒くもないし、溶けないし、奇抜な色もしてない…普通のクッキーでもいい?」
「…うん。うん、うん!欲しい」
俺は何度も頷いた。
女は自分の鞄をごそごそと漁り、綺麗にラッピングされたクッキーを出した。
「用意してたんじゃん」
「だって、学校行っても溶けないようにクッキーにしたのに、あんなにチョコを強調してくるんだもん。チョコじゃなきゃダメなのかなって思うじゃん」
「お前から貰えんなら、なんでもいいよ」
不安そうな顔をしていた女の顔に、いつもの笑顔が戻った。
「はい!」
「ありがと」
「本命だから、それ」
「え、まじで?」
「君、本当に鈍いよね。…3倍返し期待してるから。じゃあね」
女は俺にキスした後、逃げるように家の方に走っていった。
俺は女がドアを開けた音で我に返った。
「でっけぇぬいぐるみ鞄の中に入れてきてやるよ!」
「うん!」
女は笑顔で家の中に入っていった。
俺はこの喜びをどう表現していいかわからず、叫びながら走って家に帰った。
もちろん、溶けないクッキーを大切に持って。
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