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「ほれ、ふざけない! まぁでも瘡蓋丸のような意見も当然あるよな。けど何が正解ってのはないんだ。感想だからな。自由に感じ取っていい。でだな、今日の授業で考えてほしいテーマは『良かれと思ってやったことが必ずしも相手の為になるとは限らない』ということだ。大なり小なりこういうことって実際によくあるからな。例えばーー」
キーンコーンカーンコーン。
キーンコーンカーンコーン。
授業のまとめに差し掛かった時、坂口の声を遮るようにしてチャイムが鳴った。
「あー、もう終わらなかったぁ! とりあえずプリント配っておくから次回までに各自やってくること。いいな! それじゃあ日直、号令頼む」
「起立、気をつけ、礼」
教室を出て、職員室へ向かう坂口。
「先生!」
それを一人の少女が止めた。瘡蓋丸の発言に唯一笑わなかった眼鏡少女、時尾かけ子。タイムトラベルをして、糖度四十を誇るプレミアムバナナをゴリラに渡した張本人だ。
「ん? どうした時尾」
少しかがんで、かけ子の目線に自分の目線を合わせる坂口。そして優しく笑いかけた。
「先生、あのね……あたしね……」
今にも零れ落ちそうな涙が乱反射を繰り返している。
その姿を見て坂口は全てを察した。
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