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その重いダンボールをいとも容易く持ち上げ、彼は群れの元へと戻っていった。
群れの元へ戻った彼は、少女からもらった糖度四十を誇るプレミアムバナナを、仲間達に説明して配った。
その美味しそうな匂いにみんなが喜び、勢いよく皮ごと口にすると今までにない大きな歓喜の雄叫びが荒野に轟いた。
そして宴は夜遅くまで続いた……。
朝起きると彼の目の前には、あの悪夢のような光景が再び広がっていた。
そう。仲間達が全滅しているのだ。
ピクリとも動かない、黒い毛に覆われた只の肉の塊を見て彼は気付いた。
「ウホホ……」
少女が持ってきた糖度四十を誇るプレミアムバナナ。それを皮ごと食べたゴリラ達。そして恐るべき順応力で唯一皮をむいて食べたリーダーゴリラ。ここから考えられる真相は一つだった。
出荷の時期をコントロールする為、バナナに塗布された熟成促進剤。その熟成促進剤は確かに毒性のあるものだが、商品として売られるからには当然厚生労働省の定める基準値を超えてはいない。
人や動物が誤ってバナナの皮を舐めても決して死ぬことはない。それどころか病気になるなんてこともない。
だが、それは現代での話だった。
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