甘美なる……

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「なら、すぐにくれてもいいのに……」 ユリカはつまらなそうに、赤い紅い唇を尖らせる。 「ひとつだけ、質問に答えてくれないか?」 イクトはピンク色の銀紙に包まれた粒を手に取りながら、真剣な口調で言う。 「もう、なぁに?」 イクトが急に真面目ぶりだしたと、ユリカは内心笑いながら聞き返す。 「君は、本気で僕を愛してくれているかい?」 イクトは憂いを帯びた瞳で彼女を見つめる。 「当たり前でしょう?」 ユリカがそう言って微笑むと、イクトはアンドしたように表情を緩める。 「そう、そうか……。あぁ、それはよかった……」 イクトはうっとりした様に言うと、ピンク色の銀紙をゆっくりと剥がし始める。露わになったのは、色からしてハイミルク。甘ったるいチョコレートに、ユリカは胸を踊らせる。 イクトはチョコレートを持ってユリカの前に立つと、彼女の目線に合わせてかがみ、赤い紅い唇に、チョコレートを押し付けた。 甘い香りが、ユリカの鼻腔を満たす。 (美味しそう……) ユリカはチョコレートを食べようと、小さく口を開ける。ハイミルクは彼女の舌にのると、熱で溶けていく。 「ん……?」 彼女はハイミルクに、違和感を覚えた。確かに甘いしカカオの香りがしたが、チョコレートの味ではないのだ。 「んん!?」 ユリカがこれが何かと考えながら舌を動かしていると、チョコレートの様なものが溶けだし、ドロリと毒々しい程の甘さが、口内を支配した。 「甘美な永遠を召し上がれ……」 イクトはうっとりとつぶやくように言うと、ユリカの唇を、自分の唇で塞いだ。 そのままゆっくりと押し倒される。 “このままではまずい” ユリカの本能は警報を鳴らすが、時すでに遅し。 毒々しい甘ったるさでクラクラして、ユリカの身体は力が入らない。 彼の言葉の意味を理解した瞬間、ユリカの意識はトロリと溶けて消えた。
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