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なかなか良い部屋だと思った。彼女の部屋に来るのはこれが二回目だが、前回は酔っていたので、あまり記憶がない。
「ほな、うちの犬の特徴教えとこか」
彼女は一人暮らしだが、犬を飼っている。それは知っているが、ただ、犬の姿が見えない。
「特徴? そんなんあんの? お前とこの」
「ホットドッグが大好物」
「へえ。俺と一緒やん」
「そうやねん。すごい偶然」
どこにいるのだろうと思って、きょろきょろしてしまう。交際しているとはいえ、まだ日は浅いので、あまり失礼なことはしたくない。じろじろと部屋の物を見られるのは嫌だろう。そのへんはかなり気をつけたいところだが、動物好きなので、犬の姿はどうしても探してしまう。この部屋は、広さ以外のすべての要素が物件としてパーフェクトだが狭いワンルームではあるので、隠れる場所などそんなに無い。どこに隠れているのか。
「健康にええとは思われへんから、食べんといてほしいねんけど」
「そらそ。犬言うても家族やし早死にされたら嫌やもんな」
「その場合でも犬死にではないけど」
「いや、そらそうやけど、でもそんなん食べさしたらあかんで」
「うん。もう絶対あげへんようにしてる。ただ、やっぱり持ち込んだら、飛びついてくるから、あんたも持ち込んだらあかんで。ホットドッグは外で食べてや」
そのとき犬が出てきた。俺を見ると、吠え始めた。目が合っている。犬は、作業机のしたのスペースにいたようだ。たぶんそこで眠っていたのだろう。しばらく吠えていたが、ひとしきり吠えたら、また静かになった。俺は気に入った。
彼女はリュックの中から、切れ目の入った味パンを出した。すなわち、ホットドッグのウインナーが入っていない版である。俺がホットドッグ好きなため、味パンを持ち歩いてくれているのだ。食べたくなったらコンビニでフランクフルトを買い、それをはさんで食べる。
「これには食いつかへんねん。これ単体では」
「へえ」
「ほんで逆にな、びっくりすんねけど、ウインナーだけでも、食いつかへんねん」
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