お手製

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五年一組の教室の上は家庭科室だ。 放課後だった。 「おい何か上から雫が落ちてきてるぞ」 「家庭部の女子がそう言や今日チョコ作るって」 「まじかぁ」 「失敗したチョコでも流してんじゃね?」 「うわ、勿体ねぇ」 男子数名は窓辺に駆け寄った。 仰向けになり上階を見上げる。 銀色のボウルが窓辺からはみ出ていた。 「あれチョコ溶かしてたんじゃね」 雫はそこからぽた、ぽたと落ちてくる。 「チョコだ!チョコだ!」 オレは皆の手前、大胆に窓から顔を突き出した。 「オレここから溶けたチョコ飲んでやる」 窓枠に背を載せ仰向けのまま口を開けて雫を待ち構える。 ぽた。 ごくり。 「お、命中した?」 「チョコか?チョコだろ?」 「喉に入って飲み込んじまって分かんねえ、まだまだ来るぞ」 ぽたぽた。ぼた、ぼたり。 ごくり、ごく。ごく、ごくり。 オレは身体を戻して皆の方を見渡した。 「結構飲めたぞ、なんか変な味だった」 「やっぱ失敗したんじゃね?」 「でもまあ、お手製チョコレートには変わりないさ」 ーーー翌日、臨時朝礼が開かれた。 「ええと、校長先生として皆に大事な話と悲しいお知らせがある」 「皆もバレンタインデーを控えてお菓子などを手作りする子も多いようだが、変なおまじないは大変危険だからやめるように、その、自分の一部、髪の毛や血なんかを相手に食べさせると、ええ、そのだ、想いが通じるだとかでだ、混入する女子が増えていると聴くのだが」 「悲しいお知らせとは、そのため昨日、家庭科部の六年生の女子が、部員が来る前に自分のチョコレートに血を混入しようとして手首を切り、その、深く切りすぎて出血多量で亡くなっ」 オレはその場で目眩に襲われ卒倒した。 終
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