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ツニッター、というSNSがある。
名前はそのまま、ツニッター社が開発したSNSであり、ちょっとした呟きから写真や動画まで気軽に配信できることから全世界で利用されているツールだ。先月ついに、利用者数が億を突破した、らしい。なるほど、これだけの早さで流れていくタイムラインを見れば頷けるというものだ。――僕はお昼ご飯のカップラーメンを啜りながら、みんなの呟きをゆるゆると眺めていた。
――あ、コーチさんからメッセ来てるや。……そういや、先月から南米に飛んでたんだっけ。
行儀が悪いと言いたければ言え。これが僕の休日の過ごし方である。のんびりまったりパソコンを見ながらご飯を食べておやつを楽しむ。毎日毎日学業とアルバイトで忙しい日々なのだ。誰も見てない時くらい、フリーダムに過ごしてもバチは当たらないだろう。
コタツに乗せたパソコンの場所をずらしつつ、カチカチとマウスを操作する。
『元気してるかトヨー?俺はなんとか生きてるぞ。写真ばんばん送ってくからよろしくなー』
コーチさん――というのはアカウント上での名前だ。本名は長谷川宏二という。僕の通う大学のOBにして、憧れの戦場カメラマンだ。彼は今南米の“トーワ共和国”というところに行っている。スペイン、フランス、イギリス――とっかえひっかえいろんな国の植民地になった経験のある小さなこの国は、それらの言語がまざりにまざったトーワ語という言葉を喋る。黒人も白人も黄色人種も同じだけ存在する、まさに人種の坩堝だそうだ。果物が美味しいらしく、昨日コーチさんが送ってきてくれたのも鮮やかなオレンジの写真だった。
勿論、彼は観光でその国に行ったわけではない。トーワ共和国は、準テロ指定国家とされている危険な国だ。十数年前に政府がテロ組織に完全に乗っ取られてしまい、彼らの旗のもと国民たちが今なお圧政を受け洗脳され続けているのだという。――彼らは自分達を神の使徒と定め、神の意思だという名目で次々気に入らない国民や異人を虐殺して回っているのだ。
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