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昨日の夜中にアップされたのは、先述した通り鮮やかなオレンジの写真だった。トーワ共和国はオレンジの産地としても有名なのだ――残念ながら一部の富裕層でないと買えないほど値段が高騰してしまっているらしいが。その前にアップされたのは、一生懸命バケツの水を運んでいる小さな黒人の少女の写真である。その背中には、さらに小さな赤ん坊をしょっていた。幼い子供が子守りをしながら力仕事もこなさないといけない。そして、いつ武装した者達に襲われるかとびくびくしながら過ごさなければならない。それが、トーワ共和国の実情だということなのだろう。
果たして今夜はどんな写真が送られてくることか。僕は楽しみにしながら、他の人の呟きへと視線を移した。すると、タイムリーなことにある呟きが拡散されてきたのが目に入る。
『募金をお願いします!トーワ共和国の貧しい人々を救うためのご支援を!』
それは、どうやらどこかの事前団体の広告であるらしかった。
『トーワ共和国では、今もなお国際テロ組織によって罪もない人々が苦しめられ続けています。彼らを救うために、どうか皆様のお力をお貸しください!一口百円から募金ができます!』
ツニッターでは、誰でも手軽に寄付を呼び掛けられる仕組みがある。
ワンクリックすると、指定金額分が自分の口座やクレジットから引き落とされ、簡単に募金することができるのだ。また、ツニッターを長く使って貯めたポイントを換金してそのまま募金に充てることもできる。一口百円指定、というのはこのテの募金にしては高い金額だったが――自分達にとっては、けして高額というわけではない。むしろたった百円ぽっちで救える命があるのなら、全然安い金額だろう。なんといっても、日本とトーワでは大きく物価が違うのだから。
――トーワに目を向けるなんて、この団体わかってんじゃん。百円くらいなら簡単にポチってやるよー!
募金するのは嫌いじゃない。
ましてや、尊敬する先輩が渡っている、今まさに危機に貧している国というのなら尚更そうだ。この百円で、あの子守りをしていた写真の女の子がまともな食事や薬を取れるようになるのかもしれないのである。――目に見えなくても、誰かを助けられるなんて素晴らしいことではないか。
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