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「ほい、百円投入~!」
僕は躊躇うことなく、募金のボタンをクリックした。チャリン!とお金が落ちるような効果音が鳴る。これだけで終わり。募金完了。ネットで簡単に支援できる、いい世の中になったものである。
――ま、募金するだけで満足してちゃダメだわな!コーチさんの役に立つため、世界平和のため!まずは語学の勉強あるのみよ!
カップラーメンをきっちり汁まで啜ると、僕はそのまま立ち上がった。昼御飯のあとはスペイン語の勉強をすると決めている。世界を渡り歩くなら、語学はいくら学んでも学びすぎるということはないのだ。もちろん、いずれトーワ語も勉強するつもりの僕である。
***
おかしいな、と思ったのは。翌朝九時に起きてもまだ、先輩からの定時連絡が来ていないことに気がついたからだった。
向こうの正午――日本の零時に、彼がいつも送ってきてくれていた写真が、昨日の夜は送られてきていない。何かあったのだろうか。心配になった僕は――ネットニュースに気づき、愕然とすることになる。
『トーワ共和国で大規模な爆弾テロ。死亡者は百万人以上か』
トーワ共和国は、小さな国だ。面積も広くなければ、人口そのものもさほど多くはない。――確か百万人を少し超える程度でしかないと、コーチさんはそう言っていなかったか。
「嘘だろ……!?」
そしてニュースの詳細を読み。とんでもない事実が発覚することになるのである。
トーワ共和国は、大量に仕掛けられた爆弾で国ごと吹き飛ばされたらしいということ。
その爆弾は――事前団体を装ったあるテロ組織が、募金によって集めた金で購入したものであったということを。
その組織は、こう声明を出している。
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