不安と真実

10/10
前へ
/159ページ
次へ
「柴田課長が私たちの事を知っていたんです」 「ああ、芽衣には言ってなかったけど先輩にだけは言っていたんだ。知らせてなくてごめん」 妙に真面目に言うのでちょっと驚いた。 「いいんです。信頼してる先輩だってわかったし、私も課長には入社当時お世話になってたので」 「で?話はそれだけじゃないんだよね」 亮輔さんの顔が厳しいものになった。 私は言おうか言わまいか凄く悩んだが、流石に出向の話は勇気がなくて言えない。 「課長が亮輔さんは私の事をずっと好きだったみたいな言い方をするので 一体いつから私の事をすきだったのかな?ってそれをしつこく聞いたんですが 知らないって言い張るから」 脚色しながらとっさに嘘をついてしまった。 でも課長は随分前から聞いていると言ってたからいつから好きになったかは凄く知りたい。 するとさっきまでの余裕そうな顔から突然顔を赤くさせ目を逸らした。 なんで?ここで目をそらすの? 「ったく余計な事を……」 ぼそっとつぶやいた言葉を私は聞きのがさなかった。 「余計な事って何ですか?私には凄く大事な事だと思いますが?」 珍しく亮輔さんがうろたえるのでこれは形勢逆転? 「亮輔さん?」 「な、なんだよ」 「いつから私の事知ってたんです?まさか入社前って事ないですよね?」 しかし、その言葉に亮輔さんが反応した。 え?えええ? ちょっと、今の反応・・・ 「亮輔さんっていつから私のことしってたんですか?」 どのくらい沈黙が続いたのだろう 亮輔さんは大きく息を吐くと 「いつかは知ることになるだろうし仕方ないか……どん引きするなよ」 と前振りをし話を始めた。
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

168人が本棚に入れています
本棚に追加