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芽衣との出会い side亮輔
母さんが死んだ。
末期の癌だった。
俺と親父を残して43歳という若さでこの世を去った。
女の人には珍しく病院嫌いで、父親と二人で再三病院に行ってくれと頭を下げても母は頑なに首を横に振っていた。
日を追うごとに母さんの容体は悪くなりやっとの思いで連れて行った時には
すでに手遅れで医師から余命2カ月と宣告された。
そして余命通り母は俺たちを残して先に逝ってしまった。
俺は18歳。親父は働き盛りの44歳の時だった。
芽衣との出会いは母さんの通夜の時だった。
まだめいは11歳で確か小学6年生になったばかりだったと思う。
「篤(あつし)!」
親父を呼んだその人は芽衣の父親、俺は吉野のおじさんと呼んで慕っていた。
親父と吉野のおじさんは幼馴染であり大親友でもあった。
俺が小学生の頃、おじさんは結婚したばかりで夫婦でよく遊びに来ていたのを憶えている。
母さんとおばさんも凄く仲がよくて冗談だとは思うが、生まれてくる子が女の子だったら俺と結婚させるなんて言ったのを聞いて小学生の俺は顔を真っ赤にさせていた。
「智明(ともあき)……雪子さん」
「大変だったな。俺何も知らなくて……本当に……本当に」
おじさんとおばさんのすすり泣く声が聞こえた。
その横で女の子が黙って親父たちを見ていた。
「ありがとな。綾(あや)の顔みてやってくれ。最後は苦しまずに¥眠ってるように逝ったんだ」
親父の声は震えていた。
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