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人が死ぬと悲しむ暇がないほど忙しくなる。
病院で亡くなると、そこからすぐに準備に入る。
何処の葬儀屋にするかを急いで決める。
そして葬儀屋が決まるとすぐに連絡を取る。
霊安室で綺麗なった母をみて部屋の外にでるともう葬儀屋がスタンばっていた。
直ぐに母の遺体を自宅に運ぶ。
それから棺桶はどんなタイプにするだとか通夜に出す軽食の手配。
花はどうする。
式場の部屋のタイプは?
香典返しは?
お寺さんは?
次から次へと出される質問に葬式経験のない俺たち親子はしどろもどろだった。
それから親戚や友人への連絡。
こんなのをやってて一体いつ母の死を悲しむ暇があるんだ。
だからなのかひと段落した時に親友の吉野のおじさんが来てくれたのが分かった瞬間、親父の顔が愛する人を亡くした悲しみを実感した。
でも俺はどういう訳か泣けなかった。
忙しすぎて泣けないのか……それとも母の死を受け入れられないでいるからか……
親父が葬儀屋の人に呼ばれたが、父を少しでも母のそばに置いておきたかったから俺が代わりに対応した。
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