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19時過ぎに通夜は滞りなく終わり、親戚や両親の友人たちを別室に案内した。
親父はその相手で忙しかったので俺は率先して雑用に回った。
途中、俺のクラスメートや担任も弔問に来てくれた。
結局夜10時ごろにはほとんどの人がいなくっており残ったのは俺の親戚と吉野の家族だけだった。
親父は親戚よりもずっと吉野のおじさんと話をしていた。
俺は斎場を出てひとり外のベンチに座っていた。
疲れたけど今日はとても眠れそうにない。
これから俺たち親子はどうしたらいいんだ。
親父は物静かな方だったが、母はその逆でとても元気なひとだった。
母がいたから家が明るかったと言えるほどで、その明るさが消えてしまった今、俺たち親子は今までのように生活できるのか……不安で押しつぶされそうだった。
空を見上げると星がやけにまぶしく感じられた。
その明るさが母と重なり目の前が徐々にぼやけてきた。
俺……泣いているのか?
自分の涙に驚いた。
だがその涙は止まることの知らない泉のように溢れ出てくる。
俺は唇を噛みながら声だけは出さないように堪えた。
母さん……。
その時だった。
「はい」
女の子が俺にハンカチを差し出してきた。
吉野のおじさんの子、芽衣だった。
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