芽衣との出会い  side亮輔

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その時はまだ芽衣の名前など知らず、吉野のおじさんとこの子どもくらいにしか認識がなかった。 俺は差し出されたハンカチを黙って受け取ると「お礼は?」と俺が泣いているのを知っているのにもかかわらず慰める訳でもなく、ハンカチのお礼を言えと催促してきた。 「……ありがとう」 「お兄ちゃんなんだからお礼は言わないとダメなんだからね」 そう言うと俺の隣に座った。 俺はハンカチで涙を拭い、軽く咳払いをした。 「もう10時過ぎだぞ、子どもは寝る時間じゃないのか?」 泣いてた事をごまかすかのようにオヤジ臭い事を言ってしまった。 「みんなでおばさんのお話して笑ったり泣いたりしてるの。そう言う時間を大事にしたいから……みんなが寝るまで私もねないの」 小学生の言葉とは思えなかった。 「名前なんていうんだ?」 「吉野芽衣小学6年。お兄ちゃんは?」 「俺は……原田亮輔」 「高校生?」 「そう」 「ふ~~ん」 ふ~~んて何だよ。 「おにいちゃん」 「なに?」 「泣いていいよ」
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