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火葬が終わるまで俺は昨日と同じベンチでボーっとしていた。
すると芽衣が俺の前に現れた。
「お兄ちゃんのお母さん安心して天国に行けるね」
そう言ってほほ笑んだ。
「ありがとな」
「私もおばあちゃんが死んじゃった時にお母さんから教えてもらったの。
寂しかったけど私もおばあちゃんとお別れする時笑顔でお別れしたから」
「そうだったのか」
すると芽衣は急にもぞもぞしだした。
「どうした?」
「あの話ね……続きがあるの」
「続き?」
「うん」
何だか言いにくそうにもじもじしてるので教えろと言うと
「笑顔でお別れしてもやっぱり思い出して悲しくなっちゃう時もあるの。そう言う時私のお母さんはぎゅーって抱きしめてくれたの。だから……だから」
「だから?」
「寂しくなったら今度は私がぎゅーしてあげる」
その一言が俺には大きな救いというか胸が熱くなった。
それから芽衣と会うことはなかったが親父と吉野のおじさんの付き合いは相変わらずで、時間を作ってはよく家にも遊びに来ていた。
その時におじさんから芽衣の話や写真を見せてもらった。
俺はそれからもずっと芽衣の事が忘れられなくなっていた。
その芽衣が偶然にもうちの会社に入社した。
もうこれは運命だとおもった。
昔、母と吉野のおばさんが
俺と芽衣を一緒にさせようって話をしたのを思い出した。
俺は親父に頼んだ。
あの話がまだ有効なら俺は芽衣にもう一度会って、もっと芽衣のことを知りたい。
そして出来ることならぎゅっとして欲しいと……
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