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「なんでそれを?」
「柴田課長から聞いたんです」
亮輔さんはチッと舌打ちをした。
それから少しの沈黙の後に口を開いた。
「焦ってたんだ。実は君が20の時に相談に行ったのは出向の話もあったからなんだ。だけど君のお母さんに反対された。でも諦められなかった。
もし俺が出向している間に好きな男が出来たらと思ったらとてもじゃないが
海外で仕事なんかできなかったんだ」
亮輔さんは私の手を握り
「柴田課長から聞いてるかもしれないが、実はまた出向の打診があった。
ロンドンだ。いつ日本に帰ってこれるのかは正直わからない。
その前にどうしても芽衣を俺の物にしたかったんだ」
亮輔さんは私を抱きしめた。
「俺はずるい男だ。君を自分のものにするために手段を選ばなかった」
「でも私はあなたを好きになった」
「やり方はよくなかっただろう?」
「そうですね。いきなりお見合い、同棲……ジェットコースターのように短い時間にいろんなことがおこりすぎて付いていくのに必死でした」
柴田課長から話を聞かされた時はどうしようかと悩んでいたのに……
亮輔さんから話を聞くうちに徐々に迷いや悩みが薄れていうのがわかった。
「ごめん」
申し訳なさそうに私を見つめる亮輔さんを見たら私は首を横に振っていた。
「楽しかったです」
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