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待ち合わせ場所となる紫苑(しおん)は会社から徒歩5分ほどの所にある店。
大通りは賑やかだが一本奥の通りに入ると嘘の様な静けさだ。
おしゃれなバーや老舗のすし屋、個性的なカフェが並んでいる。
そんな通りに紫苑はある。
外観は白い壁に大きな木の扉あり、見た目はおしゃれなカフェって感じだ。
ずっしりとしたその扉を開け流が、緊張のせいか重く感じる。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」
白シャツに黒のソムリエエプロン姿のイケメン店員が笑顔でお出迎え。
「あ、あの7時に予約している吉野です」
どうしても自分より綺麗だったりかっこいいと緊張してしまう。
「吉野様ですね。お待ちしておりました。お席までご案内いたします。お足元が暗くなっておりますのでお気を付けくださいませ」
「は、はい」
黙って会釈で返せばいいものを返事をしてしまった。
地面は石畳の様な作りで通路の脇はガラス張りになっていて、その向こうには小さな日本庭園があった。
それをさらにきれいに見せるための間接照明が所々に設置され雰囲気を醸し出していた。
そして突き当り手前でスタッフの方が立ち止りまった。
「こちらのお部屋でございます。……原田様、お連れ様がいらっしゃいました」
そして男性スタッフが襖を開けた。
その瞬間、緊張はマックスになり、どんな顔をして入ったらいいのか考えられなくなり、視線は完全に自分の足元。
それでも挨拶しなくちゃと視線はそのままで「遅くなりました」というのが精一杯だった。
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