報告と指輪

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それから数日後亮輔さんに正式な辞令が降りた。 それと同時に私たちが結婚することは社内に広まった。 聞くところによるとかなり話題になったらしいが、心配していた 嫌がらせや嫌みなどが一切なかった。 もしかすると四宮さんをはじめ、うちの部の人たちが陰ながら守ってくれたのかもしれない。 もちろん亮輔さんも…… 準備期間やらなんやらでイギリスへは1カ月後に出発。 私は退職願いを提出し、これから1週間で引き継ぎを済ませ後は有給消化だ。 亮輔さんは引き継ぎと出向準備でこれから忙しくなるので 引越しの準備などはほとんどが私の仕事になりそうだ。 イギリスでの新居はロンドン支店の人事がいくつか選んでくれた 物件の中から自分たちがいいと思った部屋を借りる予定だ。 そんなバタバタした日が続いたある日の夕食時 「はいこれ」 一枚の紙を差し出された。 それは紛れもなく婚姻届だった。 初めて見るそれはTVで見るものと同じで以外にもペラペラだった。 「これを書いたら明日、両親に挨拶して出しに行こうか」 「え?」 「え?って芽衣は俺の奥さんになってくれないの?」 私は首を横に振った。 「じゃー。ここに書いてね。俺はもう書いたから」 そこには既に彼の名前が書いてあった。 「亮輔さん。本当に私が奥さんでいいの?」 私の言葉に呆れ顔の亮輔さん。 「芽衣意外に誰がいるんだ?」 「ですよね」 差し出されたペンを受け取り私は婚姻届に自分の名前を書こうとした。 だけど急に今までのことがバーっと思い出され、目頭が熱くなり次第に 婚姻届がぼやけて見える 「書けない」 「は?!」 「うれしくって涙でぼやけて書けない」 「芽衣」 「亮輔さん」 「だめだ。我慢できない」 何が我慢できないのかと思ってると亮輔さんは私の持っているペンを取り上げた。 「記入はあとだ!その前にベッドだ」 私の返事など聞かぬまま私たちは寝室へと向かった。
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