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「本気なんですか?」
「本気じゃなきゃここにはいない」
どうしよう。
もし、断っても諦めてくれるとはとても思えない。
じゃあ私はどうしたいんだろう。
課長のことは嫌いじゃない。私なんかにはもったいないぐらいだ。
だけど付き合うことに踏み込めないのは恐らく、課長自身に問題があるわけではなくギャラリーというか
周りの目を気にする自分の弱さもある。
「怖いんです」
「え?何が?」
「何もかもです。恋愛経験値はゼロだし、課長のファンの目も怖いし、課長は……私と付き合ったらきっと幻滅することばかりで、お見合いしたこと後悔することになりますよ」
課長は一瞬キョトンとするもすぐに余裕のある笑みを浮かべた。
「何をいうかと思えば……恋愛経験値がゼロ?大歓迎だよ。だって俺がなんでも初めてなんだろ?
俺しか見えなくさせる自信はあるから心配ない」
どこからそんな自信が湧いてくるのだろう。
考え方が私と真逆だ。
課長は話を続ける。
「それと、周りの目が気になるならそれなりの対応はするが、お見合いをしたことを後悔するっていうのは俺のセリフで、芽依が俺とお見合いしたことを後悔させないようにしないとな」
「え?」
本当に課長ってポジティブという言葉が似合うし、どう考えてもここにきた時点で私に拒否権などないってことだ。
どうしたらいい?
まだ心は決まってないのに、決定事項。
私は大きく深呼吸をした。そして課長の目をまっすぐ見た。
決して嬉しいわけではない。
正直不安だらけだ。
それでも今言えることといえば一つしかない。
「もう、どうなっても知りませんからね!」
なんとも可愛げのない。返事だった。
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