初カレの取説

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それにしても遅いな。急な仕事でも入ったのかな? 残りを飲み干そうとしたその時、携帯が鳴った。課長からだ。 「もしもしお疲れ様でーー」 『外見て』 課長に言われるまま外を見ると店の前に白のスポーツタイプのステーションワゴンが停まっていた。 すると窓が少しだけ開いた。 『遅くなってごめん、車まで来てくれる?』 「は、はい」 私は読みかけの小説に栞をはさむのも忘れバッグに詰め込み、会計を済ませて店を出た。 すると課長に助手席に乗るように言われたので急いで乗り込んだ。 「ずいぶん待たせて申し訳ない。帰り際、次長に呼ばれちゃって……」 次長は話し出すと長いことで有名だから仕方がないことだ。 「そんな、いいんですよ。それよりお仕事大丈夫だったんですか?」 「ああ。出張の件でね……」 車を発進させ繁華街を抜け郊外に向かって走っていた。 しかしまさか車だとは思ってもいなかった。 お恥ずかしい話だが、男性の車に乗るのは初めてだ。もちろん助手席に座るのも…… そのせいか緊張して自分から話しかけることもできず、ただただ窓から見える景色をみていた。 車に乗ってからかれこれ30分以上経っている。 景色も先ほどとは打って変わって凄く静かだ、どこに行くんだろう。 「景色のいいとこ連れてってあげるからもうちょっと待ってて。お腹すいてる?」 「いえ、大丈夫です。」 私の答えに課長はにっこり笑い、左手をハンドルから離すと後部座席を指しながら 「帰りに地下でおいしそうなもの買ってきたから、目的地に到着したら食べようね」 そう言うと少しだけスピードを上げ目的地へと向かった。
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