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そして暫く課長の出張話を聞いていたのだが、ふと四宮さんのことを思い出した。
ふと……じゃない。
課長と部屋で2人切りに緊張していて忘れるところだった。
「課長、実はーー」
四宮さんの私たちのことがバレそうになったことを話した。
だが課長から出た言葉に再び目が点になった。
「人違いって言っとけばでいいよ」
そんな適当なことでいいのか?すぐに反論する。
「え?!そんなんでいいんですか?見られちゃったんですよ?」
課長は持っていたビールをテーブルに置くとソファーに深くもたれ顔だけ私の方を向けた。
「じゃあ。なんか凝った理由でも考えたほうがいいの?話を作るのは構わないよでも
その度にいちいち理由を考えて取り繕ってると後でぼろが出るんじゃないかと思うけど。
俺言ったよね。伏せているとストレスになる時がくるかもしれないって」
私は黙ってうなずいた。
「恐らく今回みたいな事がこれから当分続くって事なんだよ。その度にあれこれ悩んで、
取り繕ってばかりだと身がもたなくなるぞ」
たしかに課長の言う通りだが、適当にかわせる自身がないのだ。
でも自身がないなんて言ってられないのも事実で、結局のところ私がきっぱり言えばいいことなのだろう。
「とにかく何か聞かれても違うって否定してくれ。そもそも会社では付き合っていることを秘密にしているんだから」
あ?あ。課長ってすごいな。
私とは真逆だ。
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