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「お前はそれでいいのか?」
「あ?」
「学校に反発して、教師に反抗して、なげやりになって。あとに何が残る? せっかく入った学校をこのままでは辞めることになるんじゃないか。それでいいのか。それでもいいなら俺はなにも言わない」
真面目クンは淡々と、声をあらげるでもなくはっきりとした口調で続ける。
「だが、ただ引っ込みがつかないだけなら、ここがいいきっかけだろう。俺が口うるさいからという体で授業に戻ればいい。今みたいに縛られて、悪目立ちしているのは本意じゃないだろう」
「うるせぇ! お前になにがわかんだよ」
「だったら辞めたらいい。高校は義務教育じゃないんだ。辞めて好きなことをすればいい。学校に所属しながら、言い訳連ねてサボるのは卑怯者だ」
そんなことを言ってきたやつは初めてだった。教師はいつだって、ただ授業にでろだとか、問題を起こすなというばかりで、ただ自分達の体裁を守ろうとした言葉ばかりだった。
真面目クンの、小気味いいほどに突き放してくるのは新鮮で、逆に響いた。
「お前、名前は」
「沖村拓海だ」
「沖村・・・覚えといてやるよ」
別に、言うことを聞いてやる義理はない。ちょっとくらい響いたからって今さら真面目になんかなれっこねぇ。
屋上が好きだ。寝転んで空を見上げれば遮るもんなんかなにもなく、視界全体に広がる青。それが心地よくて、ごちゃごちゃした都会のなかにいることを忘れられる。
メルヘンなつもりは毛頭ないが現実から逃げたいと思う気持ちはいつもどこかにある。赤く染めたこの髪も、その現れだろう。
全てのものに反抗して、自棄になって今がある。それでもまだ、この学校って仕組みのなかに残ろうとしているのは、自分がまだここにいたいと思っているからなのか。
あいつがいうように、そんな気持ちがありながら逃げることしかしないのは、卑怯というものだろう。
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